ボードゲーム

「ゲームで傷つきたくない」妹とボードゲームしてみたら(後編・ディクシット)

妹は「プリン」と呼ばれている。

別に彼女がプリンばかり食べている女というわけではないし、ヘアカラーが退行してきたプリンヘアというわけでもない。

特に理由はないのだが、リズムが可愛いので定着している。

プリンは果たして、一緒にボードゲームをやってくれるのだろうか。

(前回の話はこちら↓)

「ゲームで傷つきたくない」妹とボードゲームしてみたら(前編)

ゲーム嫌いの妹にボードゲームを楽しんでもらうために

妹プリンを巻き込む今回のおせっかいな試みにあたり、気をつけたいことを2点決めた。

①無理にはやらせない。やらないからといって「ノリが悪い」とか悪口をいわない場であること。どっちでも良いよというスタンス

②楽しそうなところを見せる

◆選んだゲームは『ディクシット』

大好きなゲーム。考えうる限り最も「勝った負けた邪魔されたといって泣いて山を降りる人間が出ず」基本的に始終にこにこしていられるゲームであり、しかも「妹が体験したことのない」発想力の遊び。これを体験して欲しい。

いざ、実家へ

妹は私の持ってきたボードゲーム類に引きぎみである。

私「ボードゲームやるよちょっとやってみない」

プリン「ねむい」

妹は寝転がってしまう。

一方の母はやる気、老犬は私の脚をかじるのに夢中である。仕方ないので、妹ぬきの3名でキャッツ&パーティなどを遊んだ。

2時間程経過して、用事があることを思い出した我らはあと20分しかないことにも気がついてしまった。

母が準備のためどこかへ去る。

私とオットと犬とボードゲーム、そして寝転がった妹が残された。

……

しばし一考するが、迷いはない。

20分。

諦めるには早すぎる。

光の速さで妹の視界を遮り、オレンジのパッケージの箱を見せつける。

「これはね、考えなくていいし、ルール覚えなくていいやつだよ!どうしても一緒にやりたいよやろうよ」

泣き落としでターゲットを巻き込む作戦である。

そしてついに岩が動いた

妹が立ち上がったのである。

発想のゲーム

テーブルまで来てくれた妹を座らせる。

コマであるうさぎを取り出し、好きな色を選ぶように言うと、

「うさぎだ、うさぎ」とつぶやいていた。

そういえば妹は無類のうさぎ好きであった。

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ルール説明。

「84枚の絵のカードを使います。

1人が語り部になり、手札から1枚を選んでお題をつけます。セリフでも歌でも映画でも何でもいいです。1文を決めたら裏向きにしてカードを出してください。例えば、このカードで、「ひじ」です。他の人は、そのお題に「より近い」と思うカードを選んで、裏向きに出してください。ひじを出してください。そして、皆さんは語り部が出したカードがどれだったのかを当てます。

ただし語り部は、全員に当てられた場合は0点、誰にも当てられない場合も0点です。なので、誰かにはわかってもらえるけれど、あんまりわかりやすすぎないお題を考えないといけません。」

プリン「ふーん、理解。」

妹の口癖は「理解。」である。

「わかった」「理解いたしました」「僭越ながら承知しました」「すごくわかりました大変楽しみです」等を省略したものだと思われる。

それではゲーム開始!

全日本妹をボードゲーム好きにしたい協会会長代理として、私が語り部を行う。

「ゴゴゴ…ゴゴゴ」

と言いながらカードを出す。

「ゴゴゴ…てんてんてんだよ…ゴゴゴ」念のためにいうとこれがお題である。

ゴゴゴとゴゴゴの谷間のてんてんてんの部分も忠実に読み上げ連呼すると、

げらげら笑いだす妹。

「へーおもしろい」

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そうだ妹、ひじでもゴゴゴでもいいんだ!

ちなみに正解は③。妹は見事に当たりで喜ぶ。

次は妹が語り部。

「セーラームーン」

オットは困惑していたが、私は0.5秒でひきあてる。

ムーンパレスっぽいからでしょ!と言うと、いやこの卵っぽいところだと言う。うむ、わかるな

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ゲームは続く。

以下は妹の作品の一部である。

「パティスリー」

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「画期的な政策」

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など……面白いよなあ、ディクシット。

さて盛り上がってきたところで時間切れ。

プリン「えーもっとやりたい!」

食いついてきてるじゃねえか。

というわけで、用事を済ませてから、母も加わりゲーム再開!

ディクシットな夜

「お題を思いついた人からやりましょう」と言うと、

早速妹からでる「はい!」「はいプリンさん」

「出したいのがいっぱいある」とのこと。

「こんなにゲームやりたがるなんて珍しいね」驚く母。なんかすごいうれしい私とオットと犬。犬は嬉しさのあまり足をかじってる。

プリン「歌でもいいの?」

プリン姉「いいよ」「歌でもダンスでも」

プリン母「ダンス?」

プリン姉夫「ダンスっていいんだっけ」

歌う女

妹は歌った。

歌いだした。

「ターンタカタカタカッタターンタン」

f:id:gotoyuri:20160927203242j:plain 確かにディクシットには「歌でも可」って書いてあるけど、本当に歌うアグレッシブな人、初めて見た……スターウォーズのテーマに似たその歌をうたう妹の姿を見ながら、

なにかが降臨した……そんな気がした。

その後、母がゴールの30点に達したので、ゲームは終了、かじられ続けた私のジーンズに穴が開いたところで帰り支度をはじめようかと思っていると、

プリン「まだやりたい」

「あと2つ言いたいのがあるから。」

私とオットは顔を見合わせ、場は延長戦に突入した。

そのうち母も「思いついたから言いたい!」と言い出した。

夜はまだ終わらない…

 

振り返って、ゲーム嫌いの人と遊んでみたいときには。

初心者が取り組みやすいもの、そしてできればその人の性格上好きなそうなゲーム。

これを選んだら、あとすることは一つだけ。

「誘う」。テーブルに来てくれたら、後はゲームが助けてくれる。

しかし重要なのは誘い方だと思う。

今回、ゲーム類を見て初めは興味を示さなかった妹だが、あなたとどうしてもやりたい!とド直球に口説いたところ来てくれた。

ゲーム嫌いの家族や好きな人と遊んでみたいときには、「ゲームをやりたいって、相手してくれるなら誰でも良いんでしょ」 と思われるようなスタンスではなく、

「あなたとやりたい 」を押すのが良いと思った。

結局ゲームの楽しさは、その場で集まった人たちで、わいわいがやがやした雰囲気にいられることだと思うから。

ゲームしない?と言われた時、

「自分は上手にできないかもしれないし」「嫌なこと言われたら嫌だな」という不安を相手が持っていたとしても、

「あなたと遊びたい」と言われたら、「私と遊びたいなら、上手じゃなくてもいいか、嫌なこと言ったりしないだろう」

と思えるのではないだろうか。

そもそも、「この人とこそゲームしたい」って愛である。「ゲームしたいんじゃなくて、あなたと遊びたいの」ってそれ告白ぐらいの好意の表明だと思う。だから相手は安心してくれる。

個人的には、今回の企画は大成功だと思っていて、妹からもう一回やりたいと言われた時は超嬉しかった。

あれほどゲームを無視していたのに、始まってみれば誰よりも楽しそうであった…

ディクシットを作ってくれた人、届けてくれた人に心から感謝。またtwitterで「考えなくてよくて、誰も傷つかないゲーム」のアイディアをお寄せくださった皆様、ありがとうございました!

おまけ

プリンさんが「これ大好き」とコメントしたカード…

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ゲームに嫌な思い出のある人よ、正月が憂鬱な中学生よ、もっと周りと遊びたいゲームを愛する人々よ!

皆に光あれ!